開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精12


東の空が、だんだんに明るくなり
ました。
「ちゅん、ちゅん、ちゅん」
すずめのなき声も聞こえます。



「わしは、夢をみていたのだろうか。
美しい上品な女の人、舌がとけて
しまいそうなうまい酒、おいしい
料理。
あれは、夢だったのだろうか。
いや、夢ではない。



わしは、梅香となのる女の人と、
たくさんの歌をよんだ。ほんとに
楽しいひとときだった」
文次は、小声でつぶやきました。



すると・・・。
風もないのに、梅の花びらが、ひ
らひらと文次の上に舞いおりてき
ました。
そして、梅の花の香りが、いちだ
んと強くなりました。


             つづく



「開善寺の早梅の精」は、信州の
伊那谷にある「開善寺」に伝わっ
ている「早梅の精」の話をヒント
にして、みほようこが書いたもの。