火とぼし山


    火とぼし山3


「そう、三日後。仕事が忙しいか
ら、早くきてほしいというんだ」
「急な話ね。なぜもっと早くいっ
てくれなかったの」
「ごめん。昨夜、決まったんだ」



「次郎さん。どこへ引っ越すの」
諏訪湖の西にある村。今、白鷺
が飛んでいった方向にある村だよ」
西山をゆびさし、次郎がいいました。



「私、次郎さんと別れるなんて、
いや。ぜったいにいや」
大好きな次郎とはなれて暮らす生
活なんて、きよには考えられませ
んでした。
「おらも、きよちゃんと別れるの
はつらい。でも、仕事だからし
たがない」
次郎は、割り切っているようでした。


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。