火とぼし山


   火とぼし山8


「あっ、次郎さんだ。約束通り火
をたいてくれたのね。ありがとう。
次郎さん。今、行くから待ってい
てね」
きよは、遠くにみえる火をめがけ
て、諏訪湖のまわりを足早に歩き
ました。



しかし、歩いても、歩いても、な
かなか次郎の所へたどりつけません。
小さな火をみてから、一時間後。
やっと、次郎の所へたどりつきま
した。
家を出てから、どのくらいの時間
がたっているのでしょうか。



「次郎さん。会いたかったわ」
きよは、次郎にかけよりました。
「きよちゃん。ほんとにきてくれ
たのだね。ありがとう。
おらも、きよちゃんに会いたかった」
次郎は、笑顔できよを迎えてくれ
ました。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。