火とぼし山


   火とぼし山13


今日は、次郎と会う日。
きよは、湖の氷の上を歩いていこ
うと思いました。
でも、湖の氷は薄く、氷の上にの
ぼると、「みしっ」「ばりっ」と音
がします。



こんな寒い日に、湖に落ちれば死
んでしまいます。
きよは、氷の厚そうな所をみつけ、
そろそろと歩いていきました。



「おや? 氷の上を、誰か歩いて
くる。誰だろう」
明神さまは、あわてて岸にあがり
ました。
明神さまは、諏訪地方を守ってい
る神様。農耕の神様・狩猟の神様・
風の神様ともいわれています。



明神さまは、下諏訪に住んでいる
奥さんの所へ行く途中でした。
「娘か。こんな寒い夜、あの娘は
どこへ行くのだろう」
娘のことが気になった明神さまは、
そっと後をつけました。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。