火とぼし山


   火とぼし山35


「とてもおもしろい人だった。
会っている間、二人とも笑いっぱ
なしだった。その人ね、大きな農
家の一人娘なんだって。
おらに、養子にきてくれないかと
いうんだ」
次郎は、見合いをした娘のことを
話してくれました。



きよは、「とてもおもしろい人」
「大きな農家の一人娘」「養子」と
いうことばが、気になりました。
貧乏なわが家と違い、その人の家は
裕福なんだろうなと、きよは思いま
した。



「次郎さんは、これからもその人と
つきあうの」
「おらは、つきあう気はない。でも、
その人が、これからもつきあってほ
しいというんだ」



次郎さんが、誰とつきあおうと勝手だ。
でも、私とだけつきあってほしい。
きよは、心の中で強くさけびました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。