火とぼし山


   火とぼし山43


「私には、きよの気持が、よくわ
かるわ。 危険をおかしてまでも、
一分でも早く、大好きな人に会い
たいという気持。
男のあなたには、わからないでし
ょうね」
手長がいいました。



「わしにだって、わかるさ。
でも、こんな夜中に、湖を泳いで
渡るなんて危険すぎる。
深みにはまったら、どうするんじゃ。
諏訪湖には、深い淵になっている
場所があるからのぅ」
足長が、心配していいました。



「達者な泳ぎだから、深みにでも
はまらない限り、大丈夫でしょ。
魚が泳いでいるような、みごとな
泳ぎね」
きよの泳ぎをみて、手長が感心し
たようにいいました。


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。