火とぼし山


   火とぼし山53


「そんなのいや。せめて、月に二
度は会いたい」
きよは、自分の気持を次郎に伝え
ました。



「きよちゃん。今、野良の仕事が
忙しい。だから、無理だよ」
「そんなことをいって、次郎さん
は私と会うのがいやになったんじゃ
ないの」
きよがさみしそうにいいました。



「考えすぎだよ」
「じゃあ、見合いをした人と会う
ため」
「その人とは会っていない」
次郎が、ぶっきらぼうにいいました。
「なんて冷たいいいかたなのだろう」
きよは、心の中でつぶやきました。


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。