火とぼし山


   火とぼし山54


「次郎さんのうそつき」
きよが、強い口調でいいました。
次郎は、はっとしました。
「おれが、うそつき?」
大好きなきよから、うそつきとい
われ、次郎はショックでした。



「次郎さん。うそつきなんていっ
て、ごめんね。でも、次郎さんは、
ほんとのことをいっていない」
「きよちゃん。おれ、うそなんか
いっていない」



「ほんと? 次郎さん」
「ほんとだよ」
きよは、次郎の顔をじっとみました。
次郎は、目をそらしました。


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。