火とぼし山58
第七章 新しい出発
九月八日。
残暑のきびしい日でした。
今日は、次郎と会う日。
「とうちゃん、かあちゃん。
これから次郎さんの所へ行ってき
ます」
「きよ、気をつけて行くんだよ。
次郎君によろしくな」
父と母が、庭先まで見送ってくれ
ました。
きよは、元気よく家を出発しました。
「無事に向こう岸へ渡れますように」
そう祈りながら、きよは湖を泳ぎ
始めました。
あたりがだんだん暗くなってきま
した。
月は、まだでていません。
つづく
「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。