火とぼし山


   火とぼし山65


「あぶない。あなた、気をつけて」
「手長。おまえこそ、気をつけろ」
二人は、何度もうずの中へひきこ
まれそうになりました。



「手長、もうやめよう。こんなこ
とをしていると、わしらまでうず
にまきこまれてしまう」
「あなた。きよのために、もう少
しがんばりましょう」



「じゃあ、今度はあちら側をさが
そう」
「あなた。うずにまきこまれない
ように、気をつけてね。
それにしても、きよはどこへ行っ
てしまったのでしょう。
淵の奥深く沈んでしまったのかしら」


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。