火とぼし山


   火とぼし山72


「手長、足長。
今日はご苦労じゃった。
家にもどって、ゆっくりお休み。
きよのことは、心配するな。
後は、わしが世話をするから」
「じゃあ、明神さま、よろしくお
願いします」
手長と足長は、家へ帰りました。



きよは、意識がもどらないまま、
眠り続けました。
きよ。おまえは、次郎ひとすじじ
ゃったのぅ。結婚する前のおなご
が、たった一人の男性を、十数年
も思い続けるなんてすごい。



普通のおなごは、「あの人が好き」
「この人が好き」と、いろいろな
男に心をうばわれるものじゃ。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。