火とぼし山


   火とぼし山73


次郎も、主人の姪に会うまでは、
きよのことが大好きだった。
でも、みよに会ってから、次郎の
心はだんだんに変わっていったの
だろう。



そして、次郎は、大きな農家のむ
こになりたいと思うようになった
のだろうな。
きよ。次郎のことは忘れるのじゃ。
心がはなれてしまった人に、いく
ら心をよせてみてもどうなるもの
ではない。



次郎のことは、忘れてしまいなさ
い。そして、一日も早く、きよに
ふさわしいすてきな人をみつけて
ほしい。
明神さまは、眠り続けるきよの顔
をみながら、心の中で話しかけま
した。


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。