火とぼし山


   火とぼし山78


「やはり、きよは何もおぼえてい
ないのですね。
自分の名前も、大好きだった次郎
のことも、みんな忘れてしまった
なんて。かわいそうに」
手長は、きよの気持を思うとやり
きれません。



「手長、足長。そういうわけなの
で、きよが眠っている間に、静岡
までつれていってほしい」
「はい、わかりました」
手長と足長は、ぐっすり眠ってい
るきよを、静岡までつれていきま
した。



次の朝。
「きよ。目がさめたか」


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。