赤い夕顔の花が咲いた


  赤い夕顔の花が咲いた23


「殿様。私がみはりをしています。
少し横になってお休みください」
盛永は、わらの上で横になりました。



「犬坊。三年前、おまえに会った
のは、この小屋の近くだったのぅ」
「殿様、よくおぼえていますね。
あれは、殿様が鹿狩りをしていた
時でしたね」



「おまえは、わしが追っていた鹿
を、たった一本の矢で射止めた。
すごい少年がいるものだとびっく
りした」



「私は、おじから弓とやりを習い
ました。おじは、若い時、ある藩
につかえていました。
私は、弓とやりだけは、誰にも負
けません」



「だから、わしの小姓になっても
らったのじゃ。
おまえは、城へ行くのはいやだと
いったそうじゃのぅ」



「はい。私は、おじとともに、畑
を耕しのんびり暮らしたいと思っ
ていました。
だから、おことわりしたのです」


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の最南
端にあった「権現城」に伝わって
いる話をヒントにして、みほようこ
が書いたもの。