赤い夕顔の花が咲いた26
どのくらいの時間がすぎたのでし
ょうか。
「お万。お万は・・・無事か」
眠っているはずの盛永が、ぽつり
といいました。
「殿様」
「殿様」
犬坊が、盛永に声をかけました。
盛永は、ぐっすり眠っています。
「お万」ということばは、盛永の
寝言だったのでしょうか。
「お万。お万は・・・無事か」と
いうことばを聞いた犬坊は、頭の
中が真っ白になりました。
犬坊は、ぐっすり眠っている盛永
の口から、そんなことばを聞くと
は思ってもいませんでした。
盛永さまは、誰よりもこの私を愛
し、かわいがってくれていると思
っていた。
でも、盛永さまが愛していたのは、
私ではなく、奥がたのお万さまだ
ったのだ。
犬坊の心は、乱れました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の最南
端にあった「権現城」に伝わって
いる話をヒントにして、みほようこ
が書いたもの。