赤い夕顔の花が咲いた


 赤い夕顔の花が咲いた33


「いや、わからんぞ。変装して、
城をぬけだしたのかもしれん」
すれちがった兵士たちの声が聞こ
えました。



「みつかってしまったかしら」
お万が、心配していいました。
「だいじょうぶです、奥がたさま。
奥がたさまが、着古した野良着を
着ているなんて、誰も思いません
から。さあ、先を急ぎましょう」



お万たちは、下条の兵士たちにみ
つからないように、足早に歩いて
行きました。
「何、今、百姓の一家が通ったと。
それは、奥がたと若君じゃ。すぐ
後を追え」
遠くで、兵士のどなる声が聞こえ
ました。


           つづく



初めてこの物語を読んでくださった
 かたへ


     赤い夕顔の花が咲いた1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080805#p1



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て読むことができます。



「赤い夕顔の花が咲いた」は、
信州の最南端にあった「権現城」
に伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いたもの。