瑠璃寺の青獅子20
男は、獅子頭をじっとみています。
どのくらいの時間がすぎたのでし
ょうか。
和尚には、長い時間がすぎたよう
に感じました。
突然、男がさけびました。
「だめだ。この獅子頭は、生きて
いない。わしは、木の中に眠って
いる獅子を、目ざめさすことがで
きなかった。
いっしょうけんめい彫ったけれど、
生きているようにみえる獅子頭は
彫れなかった」
そうさけぶと、男は滝つぼにむか
って、獅子頭をなげつけました。
「あっ」
和尚が声をあげた時には、獅子頭
は滝つぼに落ちていました。
「わしには、すばらしい獅子頭に
みえたが・・・」
和尚は、小声でつぶやきました。
つづく
昨日の分は、こちら。
瑠璃寺の青獅子19
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20081014#p1
初めてこの物語を読んでくださっ
たかたへ
瑠璃寺の青獅子1
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080926#p1
「瑠璃寺の青獅子」は、信州高森
町の瑠璃寺に伝わっている話をヒ
ントにして、みほようこが書いた
物語。
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