有明山に住む鬼・八面大王


   有明山に住む鬼・八面大王1


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20090424#p1



 「有明山に住む鬼・八面大王」より


「とんとん」
「とんとん」
誰か玄関の戸をたたいています。
「こんなに遅く、誰だろう。
しかも大雪の夜に」
さくと弥助は、思わず顔をみあわ
せました。
時計をみると、十一時を過ぎてい
ます。



「どなたじゃ」
さくが声をかけました。
「旅の者です。吹雪のため、道に
迷ってしまいました。
今夜一晩、泊めていただけないで
しょうか」
女の人の声がしました。



弥助が戸を開けると、若い娘が立
っていました。
娘は、雪でびっしょりぬれ、ぶる
ぶるふるえています。
娘の顔は、真っ青でした。



「寒かったでしょ。さあ、早く中
へ入りなさい」
さくが、娘に声をかけました。
「ありがとうございます。ほんと
うに助かります。
夜遅く、しかも大みそかの夜に、
迷惑をかけもうしわけありません」



「困っている時は、おたがいさま
じゃ。
今、きがえを持ってくるで、待っ
ていておくれ」
そういって、さくは部屋へきがえ
をとりにいきました。