有明山に住む鬼・八面大王6
暮れもおしせまった十二月二十九日。
朝から小雪が舞う寒い日でした。
「おっかあ。これから、穂高の町へ
買物にいってくるで」
弥助は、台所にいる母・さくに声を
かけました。
「寒いのに、ご苦労じゃのぅ。
弥助、八面大王にさらわれないよう
に、気をつけてな」
さくが、心配そうにいいました。
「おっかあ。心配しなくても、だい
じょうぶじゃ。
おいしいものを買ってくるで、楽し
みにして待っていてくれや」
そういって、弥助は家をでました。
弥助には、父がいません。
弥助が幼い時に、父は山へ薬草をと
りに行ったまま行方不明になりました。
つづく
昨日の分は、こちら
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20090829#p1
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