開善寺の早梅の精15
「文次さん。昨夜は、ほんとうに
楽しかったわ。ありがとう。
来年、梅が咲くころ、また会いま
しょうね。きっとよ」
どこからか、やさしい声が聞こえ
てきました。
「あの美しい女の人は、梅の精だ
ったのかもしれない」
文次は、そう思いました。
そうです。
文次の前にあらわれた若い女の人
は、月香寮の前に咲いている早梅
の精だったのです。
梅の花匂ふ袂のいかなれば
夕暮れごとに春雨の降る
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20100108#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20091225#p1
「開善寺の早梅の精」は、信州の
伊那谷にある「開善寺」に伝わっ
ている話をヒントにして書いたもの。