愛犬「りゅう」 ばいばい、またね 9
5 「さわるな、これはぼくのごはんだ」
ぼくには一つだけ悪いくせがあった。
あーちゃんがごはんを運んでくると、
ぼくは食器の中へすばやく手を入れて
しまうのだ。
なぜ手を入れるようになったかというと、
ぼくには弟と妹がいて、早くごはんを食
べないと、ごはんがなくなってしまった。
だから、ぼくはごはんが運ばれてくると、
「これは、ぼくのごはんだ。 おまえたち、
手をだすな」って、弟や妹にいっていた
のだ。
今は誰もごはんをとる人はいないのに、習
慣ってこわいね。
食事のたびに、ぼくはあーちゃんにしから
れた。
「りゅう、食器に手を入れてはだめよ」
「これはりゅうのごはんだよ。 誰もとら
ないから、安心しておたべ」と。
あーちゃんはそういったけれど、ぼくは安
心できなかった。
まさか、あーちゃんがぼくのごはんを食べ
てしまうとは思わなかったけれど・・・ね。
つづく
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