古事記神話「古事記物語」


    豊玉比売 12


「じゃあ、おまえが、婿を送って
あげなさい。海原の真ん中を渡る
時には、恐ろしい思いをさせない
ように気をつけて送ってあげなさい」
海の神は、鰐の背中に山彦をのせ
見送りました。



その鰐は、約束通り、一日で山彦
を地上の国へ送りました。
鰐が帰ろうとした時、山彦は身に
つけていた紐つきの懐剣をほどき、
鰐の背中に結びつけました。



「鰐よ、ありがとう。気をつけて
帰るのだよ」
山彦は、鰐の姿が見えなくなるま
で、鰐を見送りました。
山彦を送った一尋鰐は、後に「佐
比持神」といわれるようになりま
した。


         つづく