黄金色のまゆ玉7


昨日につづき、童話「黄金色のまゆ玉」を
紹介します。



「私、この下諏訪の地が気にいったわ。朝
も早くから太陽の顔をみることができるし、
上諏訪のやしきよりずっとあたたかい。
それに、この頃温泉もわきでるようになっ
たし。だから、私はずっとここでくらすつ
もりよ」



そういって、奥さんは下諏訪のやしきで暮
らすことになりました。
もともと、人がうらやむほど仲の良い夫婦。
明神さまは奥さんと離れているのがつらく、
夜になると、毎晩奥さんに会いにいきました。


 
 バリバリッ。
 みしっ。
 ぱりっ。
 みしっ。



「今夜も寒いのぅ」
明神さまは、今夜も奥さんのところへいそぎ
ます。
空には、星が美しく輝いています。
「明神よ、いつまで奥さんとはなれてくらす
つもりじゃ。一日も早く奥さんと仲なおりし
たまえ」
どこからか声が聞こえてきました。
「そうじゃのぅ。一日も早く妻に戻ってきて
もらわなくてはのぅ」
明神さまは、心の中でそっとつぶやくのでした。



あれから、何千年もの月日がながれました。
明神さまは、今も湖の向こう側に住んでいる
奥さんのところへ通っています。
冬になると、明神さまは湖の氷の上を通り、
奥さんのところへ行きます。



諏訪の人々は、明神さまのかよう道を、「お
みわたり」とよぶようになりました。


      おわり