童話「白駒の池」


   「白駒の池」3


長者は、まじめに働く清太を、かわいがっています。
清太は、長者のお使いもします。長者のおともで馬
を走らせ、遠くの村へでかけることもありました。
そんな清太にも、たった一つ、楽しみがありました。
白駒の背に、きよをのせて、八ヶ岳のふもとの高原
を、二人で走りまわることでした。きよと一緒に高
原を走っている時、清太はとても幸せでした。



「さあ、おじょうさま。出発しょう」
馬小屋についた時、清太がいいました。
「清太さん。きよってよんで」
「じゃあ、きよさま。早く馬にのってくださいな」
「清太さん。それでは、だめ」
「使用人のおらが、長者のおじょうさまのことを、
きよちゃんなんていっていいの?」
「いいわ。二人だけの時は、きよちゃんってよんでね」
「はい。きよちゃん」
清太は、うれしそうでした。
そんな清太を、きよもうれしそうにみています。



「白駒。出発するぞ」
清太は、白駒に声をかけました。
「清太さんは、白駒が好きなのね」
「おれ、白駒が大好き。白駒も、おらを好きだと思う
よ。ねえ、白駒」
「ぼくも、清太さんが大好き」というように、白駒は
「ひひーん」となきました。


       つづく