童話「白駒の池」


「白駒の池」11


「そんなことがあったのね。私、何も知らなかったわ」
「おれ、この家にきた時から、白駒って、ふしぎな馬
だなと思っていたんだ」
「白駒。あなたは、夜中にどこへ行っていたの?」
きよは、白駒のひとみを見ながら、聞きました。でも、
白駒は、遠くの山をじっとみているだけでした。



「清太さん。ぼつぼつ、ゆうすげの花の咲く場所へ移
動しない?」
きよがいいました。
「そうだね。じゃあ、出発しようか」
「ゆうすげの花が咲いていた場所を、ちゃんとおぼえ
ている?」
「ああ、おぼえているよ。美しい花だったから、よく
おぼえているよ」
二人は、白駒の背にのり、ゆうすげの花が咲いている
場所へ走っていきました。



「きよちゃん、ここだよ」
「あら、つぼみがかたいのね。今夜、花が咲くかしら?」
「だいじょうぶだよ。きよちゃん」
「ゆうすげって、日光きすげのように、群落にはならな
いのね」
「そういえば、あっちに一本、こっちに一本という感じ
だね。じゃあ、ここで暗くなるのを待とうか」


                     つづく



       童話「白駒の池」について


信州の佐久地方には、「白駒の池」という美しい湖が
あります。その湖には、悲しい話が伝わっています。
悲しいお話とは・・・? 
童話「白駒の池」は、「白駒の池」の伝説をヒントに
して、みほようこが書いた物語。