白駒の池


    「白駒の池」12


「清太さん、ちょっと早いけれど、むすびを食べ
ない?」
二人は、仲良くならんで、むすびを食べました。
「清太さん。二人だけでむすびを食べるのは、初
めてね」
きよは、うれしそうにいいました。



「きよちゃんがにぎってくれたこのむすび、とて
もおいしい」
「心をこめて一生けんめいにぎったの。おいしい
でしょ。清太さん」
「うん、最高においしい」
二人は、たわいもない話をしながら、むすびを食
べました。



しばらくして、きよが、あらたまった口調でいい
ました。
「清太さん。私、今、縁談の話があるの。ほら、清
太さんも知っている小諸の長者の息子・次郎さん。
その次郎さんと、所帯をもったらどうかといわれて
いるの。次郎さんはね、とうちゃんの姉の二番目の
こども。次郎さんが、うちへ養子にきても良いとい
っているらしいの」
「おれ、長者のお使いで、何度も次郎さんの家へい
ったから、よく知っている。おばさんもいい人だし、
次郎さんもやさしい人だし、いい話だと思うけれど
ね」


           つづく



       童話「白駒の池」について


信州の佐久地方には、「白駒の池」という美しい湖が
あります。その湖には、悲しい話が伝わっています。
悲しいお話とは・・・? 
童話「白駒の池」は、「白駒の池」の伝説をヒントに
して、みほようこが書いた物語。