童話「白駒の池」


     「白駒の池」13


「次郎さんは、やさしい人だわ。でも・・・次郎さ
んは、小さな時から、おじさまやおばさまのいうま
まなの。だから、うちにきても、とうちゃんのいう
ままだと思う。私、人のいいなりになっている次郎
さんを、どうしても好きになれないの」



「次郎さんは、家柄も良いし、お金持ちだし、やさ
しいし、きよちゃんの結婚相手として、何の不足も
ないと思うよ」
「清太さんは、私の結婚相手は、家柄がよくて、お
金もちなら、それでいいと思うの?」
きよが、いつになく強い口調でいいました。こんな
きよをみたことがなかったので、清太はびっくりし
ました。



「私は、びんぼうでもいい。体の丈夫な、心の清い、
自分の考えをしっかりもっている人と結婚したい。
そりゃあ、お金はないよりはあったほうが良いけれ
ど、二人でまじめに働けば、食べていけると思うの。
私、心がかよいあわない人とは、いっしょにくらし
たくないわ。私、次郎さんが、わが家をついでくれ
るというなら、よそへとついでも良いと思っている
の」
「・・・・・・」
清太は、何もいえず、きよの話をだまって聞いてい
ました。
 

つづく