童話「女神さまとの約束」


童話「女神さまとの約束」14


野をこえ、山をこえ、里をこえて、白駒は走っ
ていきます。そして、山深い森の中の大きな池
にたどりつきました。青々と水をたたえた美し
い池でした。



すると・・・。
どこからか声がきこえてきました。
「福。なぜ私との約束をやぶったのですか。私
は、あなたがさいごまで私との約束を守ってく
れると信じていました。
私の手伝いをしてもらおうと、あなたを黄金色
の花が咲いて場所へつれてきたのです。
あと二十年間私との約束を守ってくれたならば、
あなたを私たちの国へ迎えるつもりでした。
それなのに・・・あなたは・・・。
私は、とても残念です」
その声は、かなしそうな女神さまの声でした。



「約束を守るということは、本当にむずかしい
ことですね。でも、どんなことがあっても、約
束はちゃんと守らなくていけないのですよ。
とくに、神様との約束は・・・ね。
ひとつでも赤い木の実を食べたものは、もう自分
の家へもどることはできないのですよ。福・・・」
と。



白駒は、「ひひーん・ひひーん」と悲しそうに二
声なくと、福をのせたまま、池にどぼーんととび
こみました。
池に大きな波がたち、福と白駒は、ぶくぶくと深
い池の底に沈んでいきました。



人々は、この池を「白駒の池」とよぶようになり
ました。
秋になると、白駒の池には、まっかに紅葉したも
みじの葉が、一枚ういているそうです。