かきつばたになった少女8
「そうね、早く帰って、おばさまにきすげの花をみ
てもらうわ」
「おばさまが一日も早く元気になると良いね」
山彦は、そういってはげましてくれました。
二人は心をひかれながらも、その日は少し話をした
だけで、別れました。
その日の夕方。
かきつばたからきすげの花をもらったおばさまは、
とてもうれしそうでした。
「かきつばた、ありがとう。きすげの花をみること
ができて、うれしいわ。もう何もおもいのこすこと
はない」
「おばさま、今日ね、霧が峰で山彦という少年に会
ったわ」
「えっ、山彦に?」
おばさまは、驚いたような顔をしました。
「おばさまは、山彦のことを知っているの?」
「ええ、よく知っていますよ。だって、山彦は私が
大好きだった人のこどもですもの」
「えっ?」
つづく
「かきつばたになった少女」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ています。
「ライオンめざめる」は、十月七日、「鳥影社」
から発行されました。
http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu4.html