かきつばたになった少女


    かきつばたになった少女10


そんなある日。
「今日こそ、山彦に会えますように」
かきつばたは祈るような気持で、山彦と初めて
会った沼のほとりで、山彦がやってくるのをじ
っと待っていました。



すると・・・。
草原のむこうから、山彦が走ってくるではあり
ませんか。
「やっと、山彦さんに会うことができた」
かきつばたは、胸をどきどきさせながら、山彦
が近づいてくるのを待ちました。
「山彦さん、こんにちは。今日こそ、山彦さん
に会えるかなと思って、朝からずっと待ってい
たのよ」
かきつばたは、はずかしそうにいいました。
「おらも会いたかった。でも、なかなか会えな
かったね」
山彦も、かきつばたに会えてうれしそうでした。



「かきつばたさん、きみは本当に美しいしね」
「私が美しいだなんて。村に帰れば、みんな美し
いかたばかりですよ」
「かきつばたさんはまぶしい位美しい。それに心
のやさしい人だ。おらはかきつばたさんのような
美しい人を、今までみたことがない」
「そんな・・・」
「うそだと思うなら、その沼の水面に、自分の顔
をうつしてごらん」
かきつばたは水辺に行き、自分の顔を水面にうつ
しました。


                        つづく



「かきつばたになった少女」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ています。


「ライオンめざめる」は、風の神様からのおくり
ものシリーズ4。
今年十月七日、「鳥影社」から発行されました。


http://www.choeisha.com/



挿絵は、長野ひろかず先生。
長野ひろかず先生には、今回だけでなく、「風の
神様からのおくりものシリーズ」四冊の挿絵をす
べて描いていただきました。
すてきな挿絵ですので、公立図書館などで挿絵を
みていただきたいと思います。



    ライオンめざめる 表表紙の絵





    ライオンめざめる 裏表紙の絵


    


ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))