げら、桜が咲いたよ


   げら、桜が咲いたよ4


十一月の半ば、あたたかな日が続きました。
桜の花が、たった一輪だけ咲きました。
「ギーィギィーギーィ」
庭でげらの声がします。



おじいさんはいそいで外に出てみました。
げらのほかに、もう一羽います。
どうもげらのガールフレンドのようです。
げらはおじいさんにガールフレンドを見せにきたの
でしょうか。
げらたちは、庭の木々をとびまわって、三十分ぐら
い遊んでいきました。



ようやく桜の花が満開になりました。
「寒い時に咲く桜も、また良いものだな」
おじいさんは、桜の花を満足気に見あげました。
桜の花が咲くのを待っていた村の人々も、桜の花を
見にきました。
「げらたちにも、満開の桜を見せてあげたいものだ」
おじいさんは満開の桜をみながら、つぶやきました。
しかし、げらたちは、あれっきり姿を見せません。


   つづく




    「花のほほえみ」より  冬桜