福寿草になった少女

福寿草になった少女


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一部分を紹介します。


庭の桜が満開になりました。
今年の桜は、みごとじゃのぅ」
「そうねぇ。こんな美しい桜は、ひさしぶりね」
二人は、桜の花にみとれていました。



すると・・・・・・。
お手伝いの人があわてて長者をよびにきました。
「だんなさま、だんなさま。た、大変です」
「何じゃ。そうぞうしい」
「だんなさま、門の所に赤ちゃんが・・・・・・
赤ちゃんがいます」
「何?赤ちゃんがいると・・・・・・」
「はい、赤ちゃんがいます」
長者と妻は、いそいで門の方へ走って行きました。



門のそばには、桃色の布で包まれた赤ちゃんがおい
てありました。
白い産着をきた、生後一ヶ月くらいの女の子でした。
「この子のこと、どうかよろしくお願いします」
そう書かれた手紙と守り袋が、女の子のそばに置い
てありました。



長者が守り袋をとりあげると、「リーン・リーン」
と、良い音がしました。
中に鈴が入っているようです。
女の子のおかあさんが、お守りのつもりで、鈴をお
いていったのでしょうか。
長者が袋をあけてみると、中に黄金色の鈴が入って
いました。
「おや?鈴に紋がついている。この紋はたしか・・・
梶の紋。梶の紋といえば、明神さまの紋じゃが。
この子は、明神さまに関係ある人のこどもなのじゃろ
か」



「まさか・・・・・・」
おくさんも鈴を手にとり、ふってみました。
「リーン・リーン・リーン」
清らかな音色が、あたりにひびきました。
「なんで、こんなかわいい子を、おきざりにするのじゃ」
「きっとわけがあったのでしょう。こんなかわいい子で
すもの、おかあさんだって、てばなしたくなかったでし
ょうに」



かわいいこどもをてばなすなんて、こどもの授からない
夫婦には、考えられないことでした。
「それにしても、かわいい子じゃのぅ」
長者はなれない手つきで、そっと女の子をだきあげました。


    「福寿草になった少女」より



福寿草になった少女」は、みほようこの二冊目の童話
集・「竜神になった三郎」に収録されています。



竜神になった三郎」は、2004年4月、「鳥影社」
から発行されました。








竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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