女神さまとの約束


  女神さまとの約束36


それから、十年がすぎました。
硫黄岳での生活は、夏は涼しく快適でした。
夏の間は、白駒の背に乗って、硫黄岳を散
歩します。
ふくは、駒草やウルップ草などの花をみる
のを、楽しみにしていました。



でも、冬は寒さがきびしく、雪が何メート
ルも積もります。雪は、五月ころまでとけ
ません。
部屋の中はあたたかでしたが、半年間は毎
日白い雪をみてくらさなくてはなりません。



ふくは、けわしい岩場の生活に、だんだん
あきてきました。 
病人をすくうことにも、むなしさを感じる
ようになっていました。
「女神さまが、自分で病人をすくえばよい
のに。なぜ私がすくわなくてはならないの」
こんな気持になることも、たびたびでした。



     つづく