竜神になった三郎


  童話「竜神になった三郎」


    こぼれ話


「おーい、おーい。私のおっかあ、
やぁーい」



この声は、三郎が恋しい妻をさがして
歩く声。



諏訪博物館ができた翌年の正月(平成
三年)、私は信州の諏訪地方に伝わっ
ている「竜になった三郎」の資料をさ
がしに、諏訪博物館へ行きました。



博物館には、「竜になった三郎」の展
示コーナーがあります。
そのコーナーで、「おーい、おーい。
私のおっかあ、やぁーい」という三郎
が妻をさがして歩く声を聞きました。



強烈なさけび声でした。
この声を聞いてから、十数年がたつ。
今でも、三郎が妻をさがして歩く声が、
耳からはなれない。



「三郎のこの声を、こどもたちに伝え
たい」
そう思って、私は、童話「竜神になっ
た三郎」を書きました。



三郎の声を聞いてから十三年後。
2004年4月、諏訪大社の「御柱祭
にあわせ、「鳥影社」で童話集「竜神
になった三郎」の本を作っていただき
ました。




童話「竜神になった三郎」より(抜粋)



きりがみねの丘に着いた時、諏訪湖
あたりが、ぼおっと明るく光っている
のがみえました。
「おっかあー、三郎だー」
「おっかあ、いたら返事をしてくりょー」
三郎はひっしでさけびました。
でも、何の返事もありません。
三郎は何度も何度もさけびました。



すると・・・。
気のせいでしょうか。
「三郎さーん、三郎さーん」
妻のやさしい声が、聞こえたような気
がしました。
「おっかあ、おっかあー。どこにいる。
いたら返事をしてくりょー」
三郎はひっしでさけびつづけました。



「ここよー。私は諏訪湖にいるわー」
妻のやさしい声が、どこからか聞こえ
てきました。
三郎はがばっと体をおこすと、諏訪湖
めざして進みました。



気がつくと、三郎は竜になっていました。
「はぁっ、はっ」
三郎は大きなあらい息をはくと、大空
にまいあがりました。
竜になった三郎は、あっという間に諏
訪湖に着きました。



「三郎さーん、ここよー」
湖の底から、優しい妻の声が聞こえま
した。
三郎は、ばしゃっと湖の中にとびこみ
ました。




      竜神になった三郎


http://www.geocities.jp/dowakan/saburou1.html



童話「竜神になった三郎」は、
みほようこの二冊目の童話集「竜神
なった三郎」に収録されています。




  童話集「竜神になった三郎」


http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu2.html




 童話集「竜神になった三郎」感想文

 
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20000105#p1