きよと清太と、そして白駒


きよと清太と、そして白駒16


第二章 ゆうすげの花咲く高原で


八年がすぎました。
きよは、十八才。
清太は、二十一才になりました。
きよは、美しい娘に成長しました。
姿が美しいだけでなく、誰からも愛さ
れる心のやさしい娘でした。



長者の家では、畑やたんぼの仕事をす
る人、山の仕事をする人、台所の手伝
いをする人など、おおぜいの人が働い
ています。
きよは、その人たちに、きがるに声を
かけます。



「なくなった奥さまも、きさくなかた
だったが、おじょうさまもきさくだね」
「おじょうさまは、いつもわしらにご
苦労さまって声をかけてくれる。
おじようさまのことばを聞くと、疲れ
もふきとぶね」



「笑顔がすてきだね」
やしきで働いている人たちは、みんな
きよが好きでした。
一方、清太も、「清太や、清太や」と、
みんなからたよりにされ、かわいがら
れています。


              つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう悲しい伝説があります。


「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。



登場人物


・きよ  長者の一人娘

・清太  長者の家で働いている少年

・白駒  長者の家の馬