きよと清太と、そして白駒


 きよと清太と、そして白駒19


次の朝。
「とうちゃん。今日、清太さんと一緒
に、ゆうすげの花をみに行ってもいい?」
「どこへ行くんだい」
「霧ケ峰高原よ」
「きよ。ゆうすげの花は、夕暮れでな
いと咲かないのだよ」
「知っているわ。とうちゃん」



「夕方遅く、清太と二人だけででかけ
るのかい?」
「そうよ。清太さんと二人でみに行く
の。とうちゃん。ゆうすげの花をみに
行ってもいいでしょ?」



「きよ。おまえは、嫁入り前の大事な
体なんだよ。
今、縁談の話もいくつかあるしね」
「とうちゃん。清太さんは、誠実な人
よ。だから、とうちゃんが心配するこ
とは何もないわ」
きよは、きっぱりいいました。



「とうちゃんも、そう思う。清太は、
ほんとにまじめないい青年だ。
でも・・・長者の娘が、夕方遅く、使用
人と二人だけででかけて行ったなん
て、村の人たちにいわれても困るしね」
長者は、まよっているようでした。


             つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう悲しい伝説があります。


「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。



登場人物


・きよ  長者の一人娘

・清太  長者の家で働いている少年

・白駒  長者の家の馬