きよと清太と、そして白駒


 きよと清太と、そして白駒50


麦草峠まで、どのくらいかかるのだろ
うか。
清太は、麦草峠に向かって歩き始めま
した。



おらが、長者に追い出されたことを知
ったら、きよちゃんは心配するだろうな。
やしきにもどり、もう一度長者にお願
いしてみようか。
いや、そんなことをしてもむだだ。



じゃあ、きよちゃんから、長者にお願い
してもらったらどうだろう。
そんなことをしたら、きよちゃんに迷惑
がかかる。
清太の心は、海にうかんでいる小舟のよ
うにゆらゆらゆれています。



清太は、ひとっこ一人通らないさみしい
山道を、きよのことだけを考えて歩きま
した。
暗闇の中で、清太の足音だけが聞こえま
す。
「さみしい道だな」
清太は、ふぅーと大きなためいきをつき
ました。


              つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。