火とぼし山11
「きよちゃん。よく知っているね」
「ばあちゃんから聞いたの。ばあ
ちゃんの家でも、蚕を飼っている
から」
「そうか」
「次郎さん。野良の仕事は、疲れ
るでしょ」
「なれない仕事だから疲れる。
夜になると、体中が痛くて」
次郎が、腰をさすりながらいいま
した。
「次郎さん。体だけは気をつけてね」
「きよちゃんもね」
二人は、別れてからのことを、一
晩中語りあかしました。
楽しいひとときでした。
東の空が、だんだんに明るくなっ
てきました。
「きよちゃん。ぼつぼつ帰らない
と、仕事に間に合わないよ。
一睡もしていないけれど、だいじ
ょうぶ」
つづく
「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。