火とぼし山


   火とぼし山17


その夜。
明神さまは、けらいの手長と足長
をよびました。
「明神さま。何かご用でしょうか」
「夜遅く、もうしわけない。早速
じゃが、二人に頼みたいことがあ
るのじゃ」
「なんでございましょう」



「夜中に、湖の氷の上を歩く娘が
いるのじゃ」
「氷の上を歩く娘? 明神さま。
湖の氷は、まだ薄い。
氷の上を歩くなんて、危険です。
こんな寒い日に、湖に落ちれば死
んでしまいますよ」
足長が、心配していいました。



「だから、娘が湖に落ちないよう
に、二人でみはっていてほしいの
じゃ」
「明神さま。娘は、なぜ氷の上を
歩くのでしょう。しかも、夜中に」
手長が聞きました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。