母の短歌35


枯芝をしのぎて赤く萌へいでし

   スカンポに今日も雨ふりしきる



亡き夫と移り住みたる頃を思ひ

   傷つきし箪笥を丹念に磨く



過ぎしのみ言ふは老ひたるあかしなりと

   自ら言ひて友は笑ひぬ



水張りし田の面に映る三日月を

   会合に急ぐ足止めて見る