母の短歌93


トンネルを抜けしまなかひに遠山郷

   盛る紅葉の山並の見ゆ



静まれる平岡ダムに影落し

   飛行機雲の西に伸び行く



天皇の落葉がくれに瑞々し

   藪柑子の朱実色冴えて見ゆ



白糸のレースのごとき蜘蛛の巣の

   日にきらめきて霜のとけゆく