有明山に住む鬼・八面大王


  有明山に住む鬼・八面大王22


「おかあさん。私が、朝飯をつく
ります。
今朝は、何をつくりましょうか」
「今朝は雑煮を食べる日じゃが、
事情があって、もち米を買うこと
ができなかった。だから、もちが
つけなかったのじゃ」



「事情とは・・・」
「暮れの二十九日、弥助が町へ買
物に行ったのだが、峠でわなにか
かっている山鳥をみつけてのぅ。
その山鳥を、逃がしてやったのじゃ。



弥助は、山鳥のかわりに、買物の
金を全部そこにおいてきたらしい。
だから、買物ができなかったのじゃ」



「そんなことがあったのですね。
その山鳥は、弥助さんに助けても
らって、うれしかったと思います。
弥助さんって、心のやさしいかた
なのですね」
弥助の顔をみながら、娘がいいま
した。


             つづく



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