鹿になった観音さま9
「三郎さ。これは、観音さまでは
ないか」
「はい、和尚さま。裏山へ行くと、
大きな黄金色の鹿が、わしにおそ
いかかってきました」
「なに? 黄金色の鹿だと。
この世に、そんな鹿がいるのか」
「いません。いや、いないと思い
ます。わしも、初めてみました。
その鹿は、ぴかっぴかっと光った
黄金色の鹿でした。
しかも、びっくりするような大き
な鹿。
その鹿が、突然わしにおそいかか
ってきたのです。
わしは、その鹿を弓でいとめました」
「三郎さ、いとめた鹿は、どうし
たのじゃ」
「和尚さま。その鹿は・・・」
「どうした。三郎さ」
「わしの目の前から、あっという
間に、消えてしまったのです」
つづく
昨日の分は、こちら
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20091110#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20091103#p1
「鹿になった観音さま」は、信州
の伊那谷にある「立石寺」に伝わ
っている話をヒントにして、みほ
ようこが書いた物語。