鹿になった観音さま10
「なに? いとめた鹿が消えてし
まったと。
三郎さ、夢でもみていたのではな
いのか」
「いいえ、和尚さま。
わしは夢なんかみていません」
「そうか」
「わしはその鹿をさがして、山の
中をあちこち歩きました。
そして、大きな杉の木の根元で、
この観音さまをみつけたのです」
「ふしぎなことがあったものじゃ
のぅ。
それで、うちのタケルとチハヤは?」
「それが・・・」
「三郎さ、どうしたのじゃ」
「タケルとチハヤは、石になって
いました」
「なに、石に?
三郎さ、どういうことじゃ」
愛犬が石になってしまったと聞き、
和尚はおろおろしています。
つづく
昨日の分は、こちら
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20091111#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20091103#p1
「鹿になった観音さま」は、信州
の伊那谷にある「立石寺」に伝わ
っている話をヒントにして、みほ
ようこが書いた物語。