沼河比売 9
すると、沼河比売が、家の中から
こんな歌を返しました。
八千矛神さま。私は、しおれた草
のような女です。
私の心は、ふらふら飛ぶ水鳥のよ
うです。
今は、自分のことしか考えていな
い鳥ですが、いずれはあなたの鳥
になりましょう。
だから、鳥を殺さないでください。
緑の山に日が沈むと、真っ暗な夜
がやってきます。
夜になったら、朝日のようにやっ
てきて、白い腕で私をやさしく抱
いてください。
そして、私の手をしっかりにぎっ
てください。
玉のような私の手を枕にして、足
をのばしゆっくり休んでいただき
ましょう。
だから、むやみにこいこがれますな。
八千矛神へ。
つづく