硫黄岳に咲いた黄金色の花


昨日につづき、「硫黄岳に咲いた黄金色の花」
を紹介します。


   「硫黄岳に咲いた黄金色の花7」



「とうちゃん、ただいま。帰ってきたよ」
「ふく。女神さまとの約束は、どうしたのかね。
約束を守らないと、大変なことになるというで
はないか。だいじょうぶかい」
「とうちゃん。三日したら、また硫黄岳へもど
るから、大丈夫だよ」
「そうか、じゃあ、ゆっくり休んでおいき」
長者は、ふくに会えてうれしそうでした。



何事もなく、二日間が過ぎました。
三日目の朝のことです。
「とんとん、とんとん」
戸をたたく音がしました。
でてみると、白駒でした。
白駒は、かなしそうな顔をして立っていました。
ふくは、こんなかなしそうな白駒の顔をみたこと
がありません。



ふくは、誰かにあやつられるように、すぅーと白
駒の背にのせられました。
「ひひーん」
白駒は、悲しそうな声でなくと、すごいいきおい
で走りだしました。
野をこえ、山をこえ、里をこえ、白駒は走ってい
きます。そして、山深い森の中の大きな池にたど
りつきました。
青々と水をたたえた美しい池でした。



その時、どこからか声がきこえてきました。
「ふく、なぜ私との約束をやぶったのですか。私は、
あなたがさいごまで約束を守ってくれると信じてい
ました。私のてつだいをしてもらおうと、あなたを
黄金色の花が咲いて場所へつれてきたのです。
それなのにあなたは・・・。
とても残念です。



約束を守るということは、本当にむずかしいことで
すね。でも、どんなことがあっても、約束はちゃん
と守らなくていけないのですよ。
とくに、神様との約束は・・・ね。
赤い木の実をひとつでも食べたものは、もう自分の
家にはもどることができないのです」
女神さまの声でした。



その声を聞いた白駒は、「ひひーん、ひひーん」と二
声なくと、ふくをのせたまま、池にどぼーんととびこ
みました。
池に大きな波がたち、白駒とふくは、深い池の底に沈
んでいきました。



人々は、この池を「白駒の池」とよぶようになりました。

秋になると、白駒池には、まっかに紅葉したもみじの葉
が、一枚だけういているそうです。