かなはおとうさんの体にしがみつき、体をゆす
りました。さっきまで元気でいたおとうさんが、
急になくなってしまうなんて、かなには信じら
れませんでした。
「かな、おとうさんのそばで、少しお休み」
おかあさんにいわれ、かなはおとうさんのそば
で休みました。
かなはおとうさんの大きな手に、自分の手をそ
っと重ねました。
すると、おとうさんと過ごした六年間が、なつ
かしく思い出されました。
おとうさんと沼へおにやんまや銀やんまをとり
にいったこと、庭できあげはや黒あげはをとっ
たことが、まるで昨日のことのように、なつか
しく思い出されました。
「やさしいとうちゃんだった。私はとうちゃん
が大好き」
かなは心の中で何度もそうつぶやきました。
おとうさんがなくなった夜のことです。
「リーン・リーン・コロンころん」
「リーン・リーン・コロンころん」
誰が鈴をふっているのでしょうか。
どこからか鈴の音が聞こえてきました。
真っ暗な部屋の中で、柱時計の上だけが、明る
くきらきらと輝いています。
よく見ると、黄金色の鳥が一羽、柱時計の上に
とまっていました。見たこともない、黄金色の
美しい鳥です。
つづく
「花のほほえみ」より 「ふしぎな鈴」表表紙と帯
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