ふしぎな鈴「朝顔のエスカレーター」の章


 ふしぎな鈴「朝顔エスカレーター」3



「かなさん、私は遠い国からあなたのおとうさ
んを迎えにやってきました。これからおとうさ
んは遠い国へ旅立ちます。
おとうさんは、あちらの国でかなさんやおかあ
さんのことを、ずっと見守っていますからね。
では、これから出発します。かなさん、おかあ
さんのことを、たのみますよ」




そういうと、黄金色の鳥はおとうさんを背中に
のせて、どこかへとんでいってしまいました。
それはあっという間の出来事でした。
「黄金色の鳥は、あちらの国っていったけれど、
あちらの国ってどこにあるのかしら?」
かなは「あちらの国」ということばが、気にな
りました。




次の朝、かなは黄金色の鳥がとまっていた柱時
計の上を、そっとのぞいてみました。
黒い種が一粒のっています。
「何の種かしら」と思いながら、かなはその種
を白いふうとうに入れ、机の奥にしまっておき
ました。
 庭へでると、おとうさんが育てた朝顔の花が、
たくさん咲いていました。白い花も紫の花も、
ピンクの花も咲いています。




「かな、みてごらん。朝顔の芽がでてきたよ。
かわいいだろ」
「かな、つるがのびてきたよ」
「ほら、みてごらん。つぼみが三つもついたよ。
もうすぐ花が咲くよ。楽しみだね」
朝顔の花をみていると、おとうさんの声がなつ
かしく思い出されました。



 
おとうさんがなくなってから、百日がすぎました。
かなの村に、初雪が降りました。


                       つづく







   「花のほほえみ」より   「ふしぎな鈴」表表紙と帯


    「朝顔エスカレーター」の章の挿絵




ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)