ふしぎな鈴「校長先生と桜の鈴」の章


 ふしぎな鈴「校長先生と桜の鈴」3


みごとに咲いた桜の花の下で、「この鈴を大切に
するのだよ」といって、娘に鈴をわたしている光
景が浮かんできたのです。
それだけではありません。娘とすごした鎌倉の様
子が、走馬灯のように校長先生の頭の中にうかん
できたのです。



「おとうさま、おとうさまー」とよぶ娘の声まで、
校長先生ははっきり思い出しました。
「やはり、かなは私の娘だったのだ」
校長先生はそう確信しました。
「しかし…かなはまだ幼い。遠い昔のことを話し
たところで、どうなるものでもない。かなもいつ
か私のことを知るだろう。その日がくるまで、そ
っとしておこう」
校長先生は心に決めました。



「かな、良いものをあげよう。桜の鈴だよ。ほら、
良い音がするだろう」
「リーン・リーン・リーン…」
 校長先生が鈴をふると、鈴虫が鳴いているような
音色が、あたりにひびきわたりました。
「かな、この鈴をふるとね、花や小鳥とお話ができ
るのだよ。ただ本当にやさしい心をもっている時し
か、花や小鳥とお話することはできないのだよ。か
なが今のようにやさしい心をずっともち続けること
ができれば、お月さまや星とも、お話ができるよう
になるのだよ」


つづく



ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

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