童話「白駒の池」


信州の佐久地方には、「白駒の池」という美しい湖が
あります。その湖には、悲しい話が伝わっています。
悲しいお話とは・・・? 



童話「白駒の池」は、「白駒の池」の伝説をヒントに
して、みほようこが書いた物語。



   「白駒の池」8


次の朝。
「ねえ、とうちゃん。清太さんと一緒に、ゆうすげ
の花をみに行っていい?」
「どこへ行くんだい?」
「霧ケ峰高原よ」
「きよ、ゆうすげの花は、夕暮れでないと咲かない
のだよ」
「知っているわ。とうちゃん」
「きよ。夕方おそく、しかも清太と二人きりで、で
かけるのかい?」
「そうよ。清太さんと二人で行くの。とうちゃん、
いけない?」



「きよは、嫁入り前の大事な娘なのだよ。今、縁談
の話もいくつかあるしね。夜遅く、使用人の清太と
でかけて、変なうわさでもたつと困るし」
「とうちゃん。清太さんは、誠実な人だわ。だから、
何も心配することはないわ」
きよは、きっぱりいいました。
「とうちゃんもそう思う。清太は、ほんとうにまじ
めな良い青年だ。でも、長者の娘が、夜遅く使用人
とでかけて行ったなんて、うわさになると困るしね」
長者は、迷っているようでした。



「ねえ、とうちゃん。二人で、ゆうすげの花をみに
行ってもいいでしょ?」
きよは、ふたたび長者に聞きました。
「まあ、清太なら・・・心配ないだろう。きよ。気
をつけて、行っておいで。ゆうすげの花は、レモン
色の美しい花だよ」



長者の許可をもらった二人は、明るいうちに、白駒
の背にのり、霧ケ峰高原へむかいました。
二人は、ちょうちんやろうそく・マッチ・むすびな
どをもって、いそいそとでかけて行きました。
 
 
                      つづく